彫刻家目線の仏像解説

●レポーター:奈良市在住 nrk さん

大人になってから奈良に暮らし始めた私。
以前からなんとなくお寺や仏像に興味を持っていたものの、何から手を付けたらよいのかわからないまま、漫然とお寺や美術館・博物館を眺めるだけ。
神社仏閣がとても身近にあるこの街の魅力をもっと知りたいと思い、初めて授業に参加させていただきました。

吉水快聞先生のプロフィールを拝見した時に、期待が膨らみました。
奈良に生まれ育ち、僧侶の資格を持ち、東京芸大で文化財の保護修復彫刻を学び、温故知新を宗とする新進気鋭の彫刻家さん。

今回の授業は、興福寺の子院であった「旧世尊院」の敷地にある国際奈良学セミナーハウスで行われる座学ということでしたので、静かで少し敷居の高い感じの講座なのでは・・・と、緊張気味に教室へ。
良い意味で裏切られました。

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趣のある門をくぐると、満開の藤の花を眺めながら、講義のお部屋へ。
先生との距離が近く感じられる、こぢんまりとした部屋。
前方の机にさらりと並べられた、鑿(のみ)や木材、そして作品たち。
びっしりと文字が並んだ小難しい資料ではなく、興味を持ちやすそうなものたちがまず目に入ったことで、気楽な気持ちで参加してもよさそうだと安心できました。

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教室から感じた第一印象のとおり、吉水先生はとてもよく通る力強い声で快活にお話しされ、初心者の私にも親しみやすく聴きやすいものでした。

まずは、仏教・仏像の起源、仏像の素材・技法、日本の仏像に用いられた主な樹種、仏像の制作過程・仕上げ方法といった流れで、仏像の概略が説明されました。

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このなかで、良質な木材の調達が非常に困難であり、大きな仏像を作れる木材は世界にももうほとんどないということに驚かされました。
東大寺を最初に作った天平時代には近畿周辺で木材を入手できたものの、鎌倉時代の再建時には山口県あたりから運搬。江戸時代には調達が不可能となっていたために、寄木金輪締めという方法で太い柱を作っていたとのこと。
少なくとも樹齢300年以上を経た木でないと、木材として不十分だそうです。
木を素材に彫刻をしている人として吉水先生は植林活動もなさっている、というお話が印象的でした。

こうした仏像にまつわる大まかな知識を頭にいれたところで、ついに本題。作り手目線からの仏像解説。
奈良市周辺にある数々の仏像が、次から次へと登場。
運慶・快慶にまつわるくだりは、快慶びいきだとおっしゃる吉水先生の一層熱を帯びた語り口調に、こちらも引き込まれました。

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時間が押してしまっており、ハイペースでお話が進んでいってしまうのが少し残念でしたが、その分、本物をゆっくり見に行ってみたいとも思わされました。

そのため、授業終了後、とりあえず奈良国立博物館に向かいました。
そこで展示されていた快慶作・東大寺蔵・阿弥陀如来立像。
吉水先生が模刻されたということで、授業のなかでも映像も豊富に詳細な解説を伺っていたため、これまでにないくらいじっくり堪能。
美しく残っている截金(きりかね)による繊細な文様に、息をのみました。

今後も少しずつ仏像を眺める楽しみを増やしていければいいな、と思いました。
ありがとうございました!