奈良ひとまち大学

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秋の山寺で歴史探訪

●レポーター:奈良市在住 nrk さん

朝から晴天に恵まれた10月下旬の土曜日。
奈良市の南東部に位置する山寺、正暦寺でのひとまち大学に参加させていただきました。
行楽日和の昼下がり、のどかな里山風景を眺めながらのドライブ。
集落のとても細い道をくねくねと入っていく道のりに途中少し不安を覚えましたが、無事到着。

秋の山寺で歴史探訪_1

楓が覆いかぶさってくるように生えており、1ヵ月後にはあでやかな紅葉が見られるのだろうなと、想像を膨らませながら、受付会場である福寿院へ。

秋の山寺で歴史探訪_2

客間の縁側に足を投げ出してお庭を眺めると向かいの山が借景となっており、山寺の風情を満喫できる景色。
この景色のために、塀の高さも計算し尽くされているとか。
聞こえててくるのは、川のせせらぎと木々の葉擦れの音、時折聞こえる鳥の鳴き声。
この贅沢な癒しの空間で、今回の授業はスタートです。

秋の山寺で歴史探訪_8

『源氏物語』や『枕草子』といった女流文学を生み出し、国風文化が最も華やかなりし一条天皇の時代に、勅願寺として創建された正暦寺。
当初は渓流を挟んで86坊が建ち並んでおり、その威容を誇っていたとのこと。
その後、藤原氏の氏寺である興福寺の別所という政治的な要所となったため、歴史の荒波に揉まれざるを得ず、何度も焼け落ち、江戸時代にもさらなる辛酸を舐め、唯一残った福寿院も廃寺のようになっていたそう。
風雨に晒され傷んだ襖絵が、往時の厳しさを窺わせていました。

秋の山寺で歴史探訪_4

福寿院客殿で正暦寺の概略をご住職からお話しいただいた後、宝物殿を見せていただきました。
中には、普段は年3回の特別御開扉期間のみ拝観が許される、秘仏薬師如来倚像も。
貴重な仏像の数々を解説付きで拝観できるというお得なプラン。
ご住職のテンポの良い語り口調は講談を聞いているようで、その世界に引き込まれました。
特に印象的だったのは120年ほど前、寺社分離の政策のなかで三輪神社から譲り受けたという日月二光立像でした。

最後に本堂へ場所を移して、お酒のお話。
正暦寺は、近代醸造法の基礎となる安定した品質の酒を大量に作れる製法を生み出したお寺としても有名です。

秋の山寺で歴史探訪_5

15世紀半ばには清酒「菩提泉」を販売していたということで、「日本清酒発祥之地」の石碑が建てられています。

秋の山寺で歴史探訪_7

当時の売れ行きはかなり好調で、最盛期には120坊にまでお寺が膨れ上がったとのこと。
酒税として納めていた額も、現在の金額で少なく見積もっても3億円!
あまりの盛り上がりに江戸幕府に目をつけられ、衰退させられたそう。残念・・・。
が、奈良県工業技術センターや天理大学などにより、1995年から菩提泉の酒母「菩提?」復活プロジェクトが始動。
正暦寺域内に自然に存在する酒の菌(発酵菌・乳酸菌・麹菌)で、現代の最高品質のものと同レベルのものを探しに探したそう。
その数、3,000種。
1998年に発酵菌と乳酸菌を突き止め、「菩提?」復活。
現在、11の蔵元がこの酒母で酒造りに取り組んでいるとのこと。
これはぜひとも味わわねば、ということで購入して帰りました♪

秋の山寺で歴史探訪_6

雄大な自然に包まれひっそりと存在している小さな山寺という印象で訪れていましたが、激動の歴史を静かに抱え受け継いでいく大きなお寺であることを、授業のなかで発見させてもらいました。
爽秋の山寺で、すてきな授業をありがとうございました!