奈良ひとまち大学

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『伝えたい』という強い思い

●レポーター:生駒市在住 三月うさぎ さん

まずは 奈良ひとまち大学様、200回目授業おめでとうございます!!
その記念すべき授業、テーマは奈良を代表する写真家「入江泰吉」。教室は、この春にオープンした「入江泰吉旧居」です。
今回の先生は、この入江泰吉旧居コーディネーターで、雑誌『あかい奈良』の編集長もされていた 倉橋みどりさん。
入江先生への愛と尊敬に溢れる熱血授業でした。

『伝えたい』という強い思い_6

入江泰吉旧居は、「依水園」から「東大寺戒壇院」へと続く素敵な道の途中にあります。
授業当日、まずは受付を済ませて、旧居内を各自ぶらぶら。
客間の窓からは木漏れ日に透けるお庭の紅葉を眺めることができ、小川のせせらぎも聞こえてきます。
和風で落ち着きのある趣味がよいお宅です。
(ここ、奈良散策の途中で一休みするのにも いい場所だと思います!)

『伝えたい』という強い思い_5

本棚の本をはじめ、調度品や飾りも入江家で使用されていたもの。
この日の床の間の掛け軸は、入江泰吉の書。向かいの衝立は奥様の書。ご夫婦共演だそうです。

『伝えたい』という強い思い_2

客間の(入江先生やお客様も実際に座っていた)ソファーや(旧居のために特注で染めた)座布団に座り、授業がスタートしました。
奈良に生まれ、大阪で写真屋さんをしていた入江は、戦争で焼け出され奈良へ戻ります。
終戦後 入江は、東大寺で空襲を避け疎開していた仏像が布でぐるぐる巻きにされ囚人に運ばれているのを見かけます。
そして、その仏像もアメリカに接収されるとの噂(実はデマ)を耳にし、「これは失われる前に記録しないと」という切実な思いを抱きます。そこで 写真で記録を残していこうと、仏像や奈良の写真を撮り始めました。

『伝えたい』という強い思い_4

その後も、入江は「失われてしまう前に 残したい・伝えたい」という強い思いをもって作品を生み出していきました。その思いが、8万点もの作品を撮影し、それを全て奈良市に寄贈することにもつながっていったようです。
授業はその後、講義の場所をアトリエに移し、改めて入江泰吉や奥様の逸話を紹介いただきました。

『伝えたい』という強い思い_3

そんな入江泰吉が50年近く住んでいたこの家は、入江の死後、奥様によって奈良市に寄贈されました。
しかし、その後10年間、最低限の管理のみでほぼ放置されていました。
倉橋さんは、この家の前を通るたびに「家が泣いている」と感じていたそうです。
そこで、倉橋さんは奈良市に嘆願、市は倉橋さんや識者を交えたワーキンググループを結成、何度も会合を重ね検討し、現在の旧居公開へと至ったのです。
そんな授業の中で「今は、家がとても楽しそうです。キラキラしています。」と言った倉橋さんも、とても嬉しそうでした。

『伝えたい』という強い思い_7

入江泰吉の「奈良の素晴らしさを記録に残し、伝えたい」という思い、この旧居や倉橋さんの「入江泰吉という人の素晴らしさや記憶を伝えていきたい」という思い、2つの強い思いが伝わってくる授業でした。
とてもいい授業をありがとうございました。