奈良ひとまち大学

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奈良女子大記念館を拝見して

●レポーター:奈良市在住 さほ さん

3月26日(土)、奈良ひとまち大学の授業「奈良が誇る美しい近代建築 ~奈良女子大記念館をディープに探索~」を受講しました。
奈良女子大学のシンボルともいえる記念館は、今までの特別公開の際、何度か拝見したことがありますが、素人目で「綺麗だな~」と見ていた時とは異なり、専門家の先生の説明を伺って、目が覚めるような気がしました。

奈良女子大記念館を拝見して_1

記念館は、1909年(明治42年)に開校した当時のままの建物で、重要文化財であると同時に、今も講堂として使われているそうです。
1994年(平成6年)の修理・改修の際には、重要文化財としての価値を損なわないように、そして、単に保存するのではなく講堂として使えるように、と考え、様々な工夫を凝らされたそうです。
この修理・改修に携わられた奈良女子大学名誉教授 上野邦一先生が講師を務めてくださいました。

奈良女子大記念館を拝見して_2

オリジナルの建物には冷暖房の設備がなかったため、床暖房を設置。
そのために2階の講堂の床が5センチほど高くなるため、今度は廊下の床も5センチ上げ、そうすると階段も調整が必要になるため、2階から1階にかけて、違和感を感じさせないように少しずつ調整をしてあるそうです。
冷房の吹き出し口も、天井の隅に違和感なく作られていたり、天井の天窓をの一部を吹き出し口に転用したりされていて、言われなければまったく気づきませんでした。

奈良女子大記念館を拝見して_3

講堂前の廊下の梁は、元々はなかったものの、修理・改修の際、強度を高めるために必要となり、講堂内部の天井の梁や、鍼を支える飾り彫りとデザインを合わせて設置されたそうです。
もともとあったようにしか見えず、説明を伺った際には、他の参加者の方からも驚きの声が上がっていました。

あちこちに花のモチーフが飾られ、天井の格子模様も、階段の手すりのダイヤの模様も、さまざまに装飾がなされていますが、華やかというよりは、簡素な美しさを感じました。

奈良女子大記念館を拝見して_4

この記念館は、かつては取り壊しの危機もあったそうです。
奈良女子大学は敷地がとても小さいので、記念館を取り壊して、教育・研究上必要な施設を作ったほうがいいのではないか、という議論もなされていたそうです。
高等師範学校創立当時に購入された「百年ピアノ」も廃棄処分寸前だったそうです。
結果的に記念館は残され、今私たちも見ることができますが、このような経緯をまったく知りませんでした。

奈良で生まれ育った私にとっては、古いものが物心ついた時から当たり前のようにあり、放っておいても永遠に残り続けるかのような感覚がありました。
しかし、この記念館のように、守り伝えていこうという人の意思や努力があってこそ、今まで残ってきたのだと、改めて気づかされました。

貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。