詳細
●レポーター:奈良市在住 とみこ さん
墨の工場見学に参加しました。
これは2月25日の授業「『全国シェア95%』の奈良墨って? ~墨と書道が秘めた新しい可能性~」の参加者特典として開催されたものでした。
話を聞いているうち、実際見に行きたくなり申し込みました。
最初にビデオを見て墨作り全体の流れを掴んだあと、御墨司 喜壽園 小林優介氏より、実物の膠や香料を手に取っての詳しい説明。
その後、工場内を回り各工程を見学したあと、握り墨を作って持ち帰るというのが大まかな流れでした。
工場内の見学で最も印象的だったのは、墨の乾燥の工程でした。
灰を使って乾燥させるので、部屋の中は入り口もケースの縁もあちこち灰を被っていました。
小林氏はこの乾燥作業を氏の父である社長と2人で受け持ち、毎朝4時起きして作業しているのだそうです。
墨が作られるのは冬の間だけ。
真冬の4時はまだ真っ暗で寒く、大抵の人は布団から出るのも億劫でしょう。
目の前にいる先生が、この灰の中を、毎朝4時に・・・と思うと、それが仕事とはいえ、墨を作ることの大変さが実感を伴って伝わってきました。
材料の話で興味深かったのは、膠は精製されていないものが、墨としては良いものができるということでした。
不純物があるほうが色に奥行きがでると。
だから今は材料を探すのが大変で、墨に適した膠を作っているのは現在1軒だけ、それも一時は無くなってしまったのを、墨を作る人たちがお願いして作ってもらっているそうです。
煤も、粒子は細かいほうが、しかし均一でないもののほうが、墨の色を深くするそう。
一つひとつの材料を知り、その工程を知るたび、墨の色がただの黒ではなく、表現する黒に成り得る理由が、感覚的に分かった気がしました。
大手の墨屋が軒並み墨汁を生産する中、喜壽園さんは墨汁を作っていないそうです。
そして今後も作るつもりはないときっぱり。
だからこそ、墨の今後を真剣に模索しているように見えました。
その理念が多くの共感を呼び、今後の発展に結びついて欲しいと強く感じました。