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奈良の鹿たち、受難な日々を乗り越えて

●レポーター:奈良市在住 鹿の子 さん

今年、一番最初に出会ったのは、元旦、夜明け前の道路の真ん中に佇む一頭の牡鹿でした。
互いに白い息を吐きながら「おめでとう!ほらっ道路の真ん中は危ないよ!!」と話しかけると、小走りで緑の中へ帰って行きました。日常の光景のなかに鹿との自然な共存の営みがある。この古都奈良に生息する鹿たちは、奈良に住む私たちにとってかけがえのない“誇り”だと思います。ここ、奈良市一帯には、現在1200頭余の鹿が生息していると言われています。

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その生息の始まりと起源は神代の伝承にまで遡りますが、いにしえには人と神をつなぐ神鹿(しんろく)・神獣、明治以降の近代に至っては歴史の反動として、しばしば人間の田畑の農作物を食む害獣として乱獲冷遇された時期もあり、木柵に追い込まれた約700頭の鹿の数が一時は38頭にまで激減するなどの受難の歴史、戦争によるもの、そして議論・係争があったことをこの授業で知ることができました。

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歴史は時として人間本位であり、しばしば自然の恩恵をもたらしてくれたその存在を忘れてしまいがちです。
人と神の存在を取り持つ大切な鹿たちのあり方も、人間側の一方的な論理でしばしば脅かされてきたことは、次世代への戒めとなり、将来にわたり記憶されるべきことでしょう。今日も鹿たちがそっと街角から私たちと歩みをともにしてくれていることを、忘れてはならないと思います。
鹿たちは人間のものであり神様のものであり、私たちにとって必要な伴侶なのです。

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人と神様をつなぐ絆として、奈良市民、奈良を愛するすべての人々にとって、街角で出遭う可愛らしい鹿たちの存在は大変喜ばしいものであり、未来永劫この共生関係がさらに撫育されてゆくことを切に願わされます。

財政難による鹿の保護費不足への対策として、1672年から売られていたと記録にある鹿せんべいを紙の帯で巻くようになり、その売り上げの一部が保護費に活用されることになる・・・鹿せんべいを買うことにより、鹿の安全・健康面が守られ、人と鹿が触れ合う機会がもてるのですね。

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ちなみに保護目的のために始まったラッパによる鹿寄せは、1953年以降ホルンへと代わり、その曲目はベートーベンの「田園」のホルンパートが吹かれているそうです。みなさんご存じでしたか?これがなかなか難しいのだとか。。。

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最後に、長くなりましたが、奈良の鹿愛護会のみなさま、くれぐれもお怪我に気をつけてこれからも頑張ってください。
本当にありがとうございました。