奈良晒 伝統の継承と進化

●レポーター:奈良市在住 むぎ さん

2018年3月3日、授業「手紡ぎ手織りの麻織物、奈良晒 ~古き良き手仕事の魅力を発信~」に参加しました。

奈良晒って、奈良のお土産物屋さんでたまに見かけるけど、結局のところ、いわゆる伝統産業で、発展性がなく衰退していく運命にあるんやろなぁ。
これは、この授業を受けるまでの奈良晒に対する私の偽らざる印象です。
私はこれまで、県外や海外の知人等へのお土産用に奈良晒を使用した商品を購入したことが何度かありましたが、そもそも、奈良晒について、その歴史から現在の取組にいたるまで、ほとんど知りませんでした。

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しかし、今回の講師、江戸時代末期に創業された奈良晒織元「岡井麻布商店」の6代目で、2003年に開業した直営店「麻布おかい」の店長である岡井大祐さんから、奈良晒への熱い思いとチャレンジ精神にあふれるお話をお伺いして、奈良晒、ひいては伝統産業に対する私の印象や考え方が一変しました。

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まず、奈良晒の歴史ですが、江戸時代の初期から中期には、幕府御用達品にも認められた最高級ブランドであり、全国屈指の生産量を誇り、奈良町の住人の約9割が奈良晒産業に何らかの関わりを持っていたそうです。
当時の奈良町が、絹織物の西陣に勝るとも劣らない麻織物のまちとして発展していたことは、本当に大きな驚きでした。
ただ、その後、独占的地位に甘んじて販路の拡大や品質の向上の努力を怠ったことや、排他的な同業組合の弊害が原因で衰退の一途をたどるのは、奈良県民にとっては、現代にも通じる痛い教訓に思えました。

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そして、岡井さんの取組についてですが、既成概念にとらわれずに、新たな感性・視点で、奈良晒という伝統産業に変化を起こし、また、独自のブランドを確立させようと挑戦されていることに強く感銘を受けました。
それは、伝統を軽視しているのではなく、むしろ、奈良晒に愛着や敬意を持ち、伝統の核心的部分を将来に継承していきたいとの思いからであることが十分に伝わってきました。

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岡井さんの取組の素晴らしいところは、異業種の方やお客さんとの交流を大切にされているところにあると思います。
たとえば、奈良県庁の奈良ブランド開発支援事業である「TEIBAN展」に参加し、多様な業種の方と勉強会を開き、県内だけでなく首都圏での展示会に共同で出展することで、発想を広げ、決まった答がないものに対して自分で考える力を身につけようとされています。
また、店舗での対面販売でお客さんから直接意見をもらうことにより、作り手の思いだけの自己満足的な商品にならないよう意識されているそうです。

岡井さんが手がける商品は、創意工夫をこらした個性的なものから、麻本来の特性や質感にこだわったものまで、実に多種多様ですが、奈良が誇る伝統技術を活かしつつ、新しい感覚で現代の私たちのニーズや嗜好にもあった魅力的なものとなっていると思います。

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奈良晒をはじめとする伝統産業の多くは、採算が合わなかったり、担い手が減少するなど厳しい状況にあることは否定できませんが、携わる「ひと」の熱意や工夫、行政をはじめとする「まち」の支援や協力等により、まだまだ進化し続け、地域活力の源泉になり得るということを、この奈良ひとまち大学の授業を通じて認識することができました。
岡井さんには、これからもますますご活躍されることを期待しています。

そうそう、授業の途中で、岡井さん自ら、麻製のフィルターを使ってコーヒーを入れてくださいました。
一般的な紙製フィルターとは違った風味になり、とてもおいしくいただきました。

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岡井さん、奈良ひとまち大学のスタッフの皆さん、本当にありがとうございました!