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●レポーター:奈良市在勤 あうん さん
12月21日の前川佳代先生の授業「甘葛煎って、どんな味?」に参加しました。
甘いものが大好きなので、授業の案内を見てすぐに申し込んだのですが、古代人が美味しいと感じていた味覚と自分が美味しいと感じる味覚が同じものなのか、授業を受ける前は疑問を持っていました。
まず、奈良女子大学の教室で古代スイーツの講義。
古代に菓子と呼ばれていたのは多くは果物でしたが、奈良時代には既に煎餅や索餅(さくべい:そうめんの元祖)といった加工菓子が食べられていて、平安時代には遣唐使がもたらした唐菓子(からくだもの:油で揚げた菓子)が登場、花や果物を象ったかわいいものも生まれて後の和菓子のルーツになったそうです。
この日のメインテーマは「削り氷にあまづら入れて新しき鋺に入れたる」と枕草子にも登場する「甘葛煎(あまづらせん)」。
ブドウ科のツタが冬期に糖度を高めて凍結枯死を防ぐという性質を利用して、その樹液を採集して煮詰めたもので、北は出羽国から南は太宰府まで広い地域で生産、貢納されて、かき氷、唐菓子、芥川龍之介の小説で知られる芋粥などの甘味料として広く使われていました。
奈良にも古代・中世のスイーツが残されています。
春日大社の神饌として使われるぶと(蒸した米粉を整形して油で揚げたもの)や、法隆寺聖霊院お会式の供物として使われているさまざまな形をした美しいだんごなどが段をなして並べられた大山立など、古代から現代までレシピが伝えられてきたことを教えていただきました。
講義のあとは前川先生のガイドで大学構内を散策して、構内のツタを探訪しました。
目的なしに歩いていると見過ごしてしまいそうな、どこにでもあるツタばかり。
樹液を採取してスイーツの原料にできることを発明した古代人のアイデアに脱帽しました。
最後にもう一度教室へ戻って、いちばん楽しみにしていた古代スイーツの試食。
唐菓子の「まがり」と「むすび」、「粉熟(ふずく)」小豆汁添え、それから天智天皇が近江で食べた不老長寿の果実とされる「むべ」の果汁をお湯で割っていただき、そして甘葛煎もちょっぴり味見させていただきました。
思っていたより甘みがしっかりしているけど後味はさっぱり、普段食べている砂糖を使ったスイーツとは違ったはじめての味でしたが、どこか懐かしくて体にやさしい味でした。
講義と試食を通じて、自分の身体が古代の人たちとつながっていることを体験することができた1日。
お料理はあまり得意ではありませんが、機会があれば自宅で古代スイーツを作ってみたくなりました。