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●レポーター:摂津市在住 チカコ さん
「奈良都民、奈良愛をデザインする」。
何とも不思議なタイトルです。
私は今も昔も奈良市民ではありませんが、地元が近いこともあって、幼いころから奈良は身近な場所でした。
そこで生まれたアイデアを、デザインという形にするってどういう過程なんだろう。
友人がオーナーである「ゲストハウス奥」での開催を機に、「奈良ひとまち大学」に初めて参加してみました。
講師の小西景子さんは、「大和茶と、わ」のパッケージデザインや「早起き奈良の朝ごはんマップ」などを手掛けたグラフィックデザイナーです。
東京都出身で、現在も東京で暮らしながら、定期的に奈良に通う自らのスタイルを「奈良都民」と称する小西さん。
まずは参加者の自己紹介の後、小西さんがこれまでに手掛けた、奈良にまつわるデザインのあれこれを見せてもらいました。
「と、わ」は現在、奈良ひとまち大学の講師用のお茶としても使用されているとのことで、この日も机にスタンバイ。
「と、わ」のデザインコンペは、応募者の作品が県立図書情報館に展示され、来館者の投票で選ばれた上位5点の作者が、現地で最終プレゼンを行うというものだったそうです。
最終選考に残った小西さんはそのプレゼンのために奈良を訪れましたが、実はその時が高校の修学旅行以来の来訪だったとか。
この「と、わ」のデザインコンペがきっかけで、足しげく奈良に通うようになった小西さん。
「何代も続くものが極端に少なかった家庭に育った私にとって、奈良は正反対の街だった」という言葉に、そこにいると当たり前のように目に映る景色も、視点を変えれば違うものが見えることに気づかされました。
奈良通いを続けるうち、次第に増えたお気に入りの店や、気になるお店の地図を作りたいと“勝手に”作った「早起き奈良朝ごはんマップ」などをきっかけに、奈良市の「大和茶まち歩きmap」の制作をはじめ、地図をモチーフにしたデザインの仕事の依頼も増えていったといいます。
いわば地域を盛り上げる活動をきっかけに、奈良との関わりを深めていった小西さんですが、2015年に奈良の女性作家のグループ「牝鹿エイト」に参加したことで「自分の好きなことを形にして、結果的にそれが奈良の人に喜んでもらえたらうれしい」と思うようになったそうです。
2018年に企画した、きたまちのギャラリー「k3 gallary & factory」での「30人のコーヒー展」もそのひとつ。
同ギャラリーでも提供する、近所のコーヒー店「NORR COFFEE ROASTERS」のドリップパックを、いろんな作家さんがパッケージデザインするというこの展示には、小西さん自身も含め30人の作家さんの作品が並び、大盛況に。
後日、大阪でも開催されたそうです。
今までの「奈良都民」としての活動は「街の人の力がなければ、絶対に実現できなかった」と力を込める小西さん。
その一方で「移住にはお金も覚悟も必要だし、善し悪しでなくそれぞれの適性もある」と語ります。
「小西さんにはデザインという方法があるけれど、自分にはそんな特技や才能がない、と思っている人はどうしたらいいか」という質問に「自分はたまたま子どものころから絵を描くのが好きで、こうなっただけ」と小西さん。
「奈良に関するイベントにも多く関わってきたけれど、先頭に立ってその場を仕切る人もいれば、事務方に徹する人もいる。そしてリピーターの参加者の中から、事務スタッフに必ずファンが付くのも見てきた」といいます。
人であれ物であれ場所であれ、好きだと思う存在との向き合い方は人それぞれでいい。
どこいにても、どんな形であっても、その姿を見ている人はちゃんといるよ、とポンと肩をたたいてもらったような気がしました。
そこにいる人ときちんとつながりながら、自分の「好き」という気持ちに忠実に向き合い、デザインという形にしてきた小西さん。
2019年の締めくくりに、すがすがしくあたたかい授業をありがとうございました。