「鹿と共生する街」であり続けるために

●レポーター:奈良市在住 モンコ さん

物心ついた時から奈良に住んでいて、鹿とともに暮らす街であることをちょっと自慢に思っていた私。他府県の友人を案内するのは、決まって奈良公園でした。
ある日、友人から「鹿に野菜の残りをあげていたら注意されちゃった。野菜の味を覚えた鹿は、畑を荒らすんだって。しかも荒らした鹿は鹿苑に閉じこめられて、一生出られないんだって!」というショッキングなことを聞いてしまいました。一生出られないなんて、なんて厳しい!
そんな折、鹿に関する授業があると聞き、その真相を確かめるべく参加することにしました。

授業をしてくださったのは、「奈良の鹿愛護会」の方。彼らが鹿の気持ちを代弁するという形で始まり、鹿と人間の共生の歴史から紐解き、「真の共生とは何ぞや?」ということを、面白くかつ真摯に教えていただきました。

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鹿は国が定めた天然記念物でありますが、野生動物。
そんな彼らが街に下り人間と一緒に暮らしている・・・。これ自体が非常に稀有なことであり、生半可なことではないのです。
大昔から、鹿が田畑を荒らしたり角で人を傷つけたり、様々なトラブルが絶えず起こっていました。でも、先人たちの知恵と工夫で共生を維持してきたのです。
大きなことで言えば風物詩にもなっている鹿の角切りがそうだし、公園内で鹿せんべいを売ること、愛護会が発足してパトロールしてくれていることもその一つに数えられるでしょう。

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本来なら本能に従い自由に生きる野生動物と、あえて街でともに生きることを選んだ私たちなのですから、そのためにはそれなりの努力と知識が必要なのです。

そう、鹿は「その辺にいるもの」ではなく、鹿とともに暮らすために何ができるのか一人ひとりが考え行動すること。
野菜をあげたらおいしい野菜を求めて鹿が公園の外に出てしまうことを想像しないといけないし、外に出たら交通事故の可能性も高くなります。
また、そこに花壇があればお花を食べるだろうし、食べられないためにお花を守る手段を講じないといけない。
鹿が単独で悪さをするのではなく、させないために、鹿とともに生きるための私たちの努力が欠かせないのです。

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家の近所に鹿が来なくても、何も知らない観光客の方がお菓子をあげたりするのを止めることはできるし、具合の悪そうな鹿がいれば愛護会に連絡してあげることもできます。鹿と暮らしているのは自分であるということ、そのことをはっきりと意識することができました。

最後に、ケガをした鹿や畑を荒らしたりして捕まった鹿が収容される鹿苑を見せてもらいました。

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ふだん石の柵が見えるばかりでしたが、中に入れてもらい全体を見渡すと、広い奈良公園のたった一角である鹿苑はやはり窮屈です。エサも新鮮な草ではなく干し草。たくさんの鹿たちが、出してほしそうにこっちを見上げています。ケガをした鹿は回復すれば出られますが、畑を荒らした鹿は同じ行動を繰り返すそうで、一生鹿苑で暮らすのは本当とのことでした。

奈良の鹿がずっとこの先も奈良のシンボルであり続けるように、ここに囲われた鹿がこれ以上増えないように、まずはこの話を周囲に広めることから始めようと思いました。