詳細
●レポーター:奈良市在住 陽子 さん
就職を機に奈良へ来て、早幾年。
講師の鉄田先生は、銀行員として働く傍ら、魅力的な奈良情報を発信されている稀有な方であると10年以上前に奈良関係の情報誌で紹介されているのを読んで以来、最近ではよくお名前をお見掛けするようになりました。
過去の本授業のことを何かで拝見し、機会があればぜひ参加したいと思っていました。
授業では鉄田先生より説明を受けながら、普段は非公開のエリアも見学させていただき、1階の業務フロアを見下ろせる場所にある通路や、お稲荷さまが祀られている屋上等、興味深く見学しました。
そういった滅多に立ち入ることが出来ない場所に入ることが出来たことはもちろん、私の勤め先は戦後混乱期の設立当初には南都銀行内(橋本町16番地)にあったらしく、昔この建物のどこかで先輩が働いていたのかと思うと個人的な所縁という意味でも感慨深い体験でした。
柱の羊の彫刻が何故羊なのかということについては、東洋では羊は吉祥に通じる縁起物であるとか、財産という考え方をする地域が多いと聞いたことがあり、特に不思議には思っていませんでした。
建物自体は西洋建築であるけれども、彫刻の意匠には東洋的な思想を取り入れているのかと。
正確な由来は不明とのことでしたが、西洋においては羊が多産であることから富・繁栄を象徴する存在であると考えられているということは、今回お話を伺うまで知りませんでした。
その考えの方が由来として自然だと思いました。
私の出身地にも南都銀行本店の設計者である長野宇平治やその師である辰野金吾、辰野と同じくジョサイア・コンドルに学んだ設計者等が設計・関与した建築物がありましたが、その内のいくつかは老朽化で取り壊されたり、震災で倒壊したりと無くなってしまいました。
そして、その跡地には高層ビルが建てられるなどし、かつての景観が失われています。
南都銀行本店の建物は、旧館がごく自然な見た目のままに耐震工事を施されていますし、三条通り側からの外観は竣工時とほぼ変わらない姿を残しているとのこと。
これからも貴重な文化財として美しい姿のまま保存されていくことを願います。
鉄田先生の講義も見学も大変楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
奈良のいろいろなことにお詳しい先生は、元々は奈良県外ご出身とのこと。
私ももう少し奈良通になりたいと思います。
時節柄開講に当たっては通常より何かと御苦労も多かったことと思いますが、おかげさまでとても貴重な経験をすることが出来ました。
ありがとうございました。