詳細
●レポーター:奈良市在住 しょーへい さん
土曜日の朝。
いつもなら平日の疲れが少し残る9時ごろ、自転車で颯爽と駆け出し、目指すは「富雄丸山古墳」。
「古墳で発掘調査体験ができるなんて、めちゃくちゃ面白そう!」と思い、今回の授業に申込させていただきました。
外は晴天、まさに発掘調査日和です。
平日の疲れを忘れ、ワクワク、心を躍らせながら富雄丸山古墳へ。
と言いつつ、移住してまだ2年目の私は、場所が分からず少し迷ってしまい、ギリギリについてしまいました(すみません)。
奈良には古墳が山ほど、否、たぶん山よりたくさんあるのです。
迷っちゃいます(笑)。
授業開始。
鐘方先生(奈良市埋蔵文化センター所長)が現地学習会ハンドブックを使って、「富雄丸山古墳」について説明してくださいました。
まず、驚いたのはハンドブックのデザイン。
全てのページのページ番号に出土品のイラストが描いてあって、ページごとに全部違うイラストなんです。
この細かさ。
製作者、携わる人々の「愛」が伝わるデザインに感動しました。
富雄丸山古墳は、日本最大の円墳で、藤原帯子(ふじわらのたらしこ)のお墓と言われいるけど、実際には誰のものかは分かっていないそうです。
また、今は「丸山」と呼ばれているけど、昔は、その隣にある茶臼山(ちゃうすやま)のことを「丸山」と呼んでいて、逆に今の丸山のことを昔は「茶臼山」と呼んでいたそうで、長い年月の中で名称が逆転したそうです。
なんで逆転するのかはよく分からないのですが、歴史って面白いですね。
ちなみに、先生曰く、「今の茶臼山も古墳じゃないかと言われてるが、調査をしていないのでまだ分からない」そうです。
実は調査されてないだけで、未知の古墳がまだ存在するんじゃないかと想像すると浪漫があるなと思いました。
座学での講義が終わり、いざ発掘調査へ。
古墳は柵で覆われていますが、周辺は公園になっています。
公園から見える範囲で既に発掘調査が行われていました。
すごい。
発掘調査の現場を初めて見たので、興奮しました。
私たちが発掘調査をするのは古墳の頂上。
かつて、古墳の主が眠っていた埋葬施設がある場所です。
発掘調査の方法をスタッフの方に教えてもらい、とりあえず見様見真似でやってみる。
調査においては、「どこから発掘されたか」がとても重要なので、各自1m四方に区切られたエリアを1つずつ担当し、土をゴリゴリと掘っていきます。
ある程度掘ったら、ふるいにかけて、土の中から埴輪の破片や、石や鉄で作られた製品の破片などの異物を探します。
これが難しい。
素人目には普通の石や粘土との区別がつきません。
1回目のふるいには何も見つかりませんでした。
しかし、スタッフの方曰く、「1回発掘調査に来れば、たいがい埴輪の破片くらいは見つけるよ」とのことなので、あきらめずにゴリゴリ掘り続けます。
と、2回目にふるいにかけた時に横から覗いてたスタッフの方が「これは・・・」と中から拾い上げました。
見つけたのは鉄製品の破片でした。
素人目には石などとの見分けがつきにくいと思ってたけど、たしかに見た目が少し違いました。
「埴輪のかけらもよく見たら分かるよ」というので、ひとつひとつよく見ていくと、違和感のあるものを見つけたので、スタッフの方に聞いてみました。
「これは埴輪の破片や」
ついに見つけました。
テンション上がりました。
しかも、結構大きめ。
自分なりに気づいた見分け方は、見た目が石みたいに自然な形や模様じゃないことと、持った感じの軽さ。
同じサイズの石より全然軽いです。
その後もいくつか埴輪の破片を見つけました。
すごく楽しい体験でした。
体験の中で感動したのは、スタッフの方の目です。
どんなに小さな欠片でもすぐに見分けます。
聞けば、調査の中では1cmくらいの欠片から始まって、「どんな製品のどの部分か」までを突き止めていくそうです。
すごい。
そんな調査の積み重ねで私たちが学んできた歴史も解明されきたのです。
最後に、現在発掘調査中の現場を見学させていただきました。
貴重な発見の手がかりになることが、ここから分かるかもしれないという現場らしく、調査を担当する研究員や学生の方々が目を輝かせて取り組んでおられました。
今回の講座で印象に残ったことは、鐘方先生をはじめスタッフの方々、研究員、学生の方々がとても活き活きとされていたことです。
発掘調査はいつでもどこでもできるわけではなく、時間やルールの制約がある中で、歴史を解明するために取り組んでおられます。
その手掛かりが、私たちが今回の体験で発掘したような、“あの小さな欠片”からかもしれないと思うと、今回出会った皆さんは日々、“浪漫”を発掘しているのだなと思いました。
帰り道、自転車を漕ぎながら、「自分が発掘したあの埴輪の欠片もものすごい発見やったりしないかな~」と浪漫に胸を膨らました(笑)。
貴重な体験、ありがとうございました!