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●レポーター:柏原市在住 ソフィアコートさん
今日の授業は珍しく夕方4時半から、古い町家が並ぶ一角にある奈良町資料館の奥の蔵の狭く急な階段+にじり口をくぐる+さらに急な階段を上がったところの蔵上3階と言われる、若草山などが見渡せる眺めの良いお部屋で始まりました。
まず、奈良町資料館の館長、南哲朗先生から日頃のお仕事や活動のご紹介がありました。
世界遺産の街として「誇りを持ち」「他人を尊敬」「語れる人に」をモットーに、地元の人達、特に子供達によりよく知ってもらえるよう、また奈良以外の方々、外国人の方々にもこの街の歴史や文化を体験しながら触れてもらえるよう、日々多角的に活動されておられます。
お次は場所を変えて資料館からすぐの菊岡漢方薬局へ。
外に出てみるとすっかり暗くなり、こういう機会がなければこんな時に奈良町を訪れることはなかったかも・・・?
町家が並ぶ通りに所々仄かな明かりが灯り、風情たっぷり。
こちらも古い町家をそのまま利用されている菊岡漢方薬局では、何と1184年から数えて24代目の店主である菊岡さんが迎えて下さいました。
仏教行事である灌仏会に使われる甘茶をいただきました。
甘茶とは、ガクアジサイの変種で、葉を揉んで酵素発酵させて甘味成分を出したものだそうです。
抗アレルギー、収れん、抗酸化作用があるとのこと。
他にも、お屠蘇は屠蘇散という生薬を配合したものをお酒に漬け込んだものということも教えていただきました。
次に、當麻寺の有名な中将姫がお育ちになった邸宅跡の建つ徳融寺へ。
資料館を出る前に中将姫の生涯について先生からざっと説明がありましたが、高貴な御生まれながら早くに実母を亡くし、継母に今で言う虐待を受けられるなど、かなり苛酷な境遇に置かれていた方のようです。
ところで奈良町と言えばまず思い浮かぶ風景、軒先に吊るされた身代わり申ですが、その身代わり申は庚申信仰によるもので、奈良町には庚申信仰のお堂が7つあったそうです。
今も残るお堂は3つとのことです。
中には青面金剛が祀られています。
徳融寺に行く途中、残る庚申堂の1つの前で説明をしていただきました。
徳融寺境内には、中将姫が継母に縛り付けられて折檻された松の木「雪責松」や、突き落とされた崖「虚空塚」(本堂の裏に崖があり、先生曰くこの崖は若草山の末端に当たるそうです)など、受難の痕跡を見て回った後、本堂へ。
中ではご住職がストーブを焚いて待っていて下さいました。
融通念仏宗であるお寺のご本尊は、北条政子の念持仏であったといわれる阿弥陀さま、脇侍は鞍馬毘沙門天と石清水八幡さんだそうです。
そして私を含め学生の皆さんが釘付けになったのが、中将姫がお告げを受けて蓮の糸を紡ぎ自ら手織られた當麻曼荼羅の1/6の写し絵。
縮小版と言えども結構な大きさで、江戸中期の絵師によるものだそうです。
近付いて拝見すると、金も鮮やかな極彩色の精細な絵と文字がびっしり描き込まれていました。
また、ご住職自ら独特の節回しで曼荼羅の絵解きをして下さいました。
かつてはお寺に集った信者の方が、このように絵解きをしてもらいながら極楽浄土への思いを募らせておられたのかなと想像してみました。
その後、珍しい赤子を抱いた子安観音像も見せていただきました。
最後に奈良町資料館まで戻り、庚申堂青面金剛を拝見させていただいた後、平成の吉祥天が安置された吉祥堂にて昔人体験です。
資料館の中のあちこちに置かれている今や珍しい絵看板や民具をクイズ形式で次から次へと出していただき、手に取り触ってみて学生の皆さん一同大盛り上がりでした。
昔は字の読めない人も多かったため、一目見て何屋さんかわかるように工夫を凝らしてあるそうですが、ウィットと頓知に富んだ絵看板の数々が、今となれば一体何のお店なのか想像力を問われます。
民具などもその考えられた工夫に感心しきり。
これらの多くは奈良町の各町家の奥の蔵に保存されていたもので、取り壊しや改修の際に奈良町資料館に持ち込まれたものだそうです。
先生は、先人が使っていた品々がこうして資料館で保存されていて、持ち込んだ方々が奈良町に帰って来てこちらに来ればいつでも見てもらえると仰ってました。
そして私達もこうして拝見して昔の暮らしや文化についてあれこれ想像することが出来る、とても意義ある素晴らしいことだなと思いました。
昔人体験は外国人の方々にも大好評だそうです。
こうして楽しく盛り沢山な授業はあっという間に終わりました。
今まで奈良町には何度も足を運んでそぞろ歩いたりカフェに入ったり街の雰囲気を楽しむにとどまっていましたが、この街の歴史や文化その暮らしを垣間見させていただくことで、今までとはまた違った視点でより興味深く楽しみに訪れることが出来るように思いました。
奈良町資料館の前にあるにぎわいの家や徳融寺でもイベント等をやってらっしゃるそうです。
是非また近々訪れたいです。