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●レポーター:奈良市在学 楼苑 さん
格子のある町屋。レトロなインテリアと書架に囲まれた暖かいカフェが、今回の教室でした。
掘りごたつに潜り、美味しいお茶をいただきながら、奈良出身の新進映画監督 戸田彬弘さんのお話に耳を傾けました。
映画監督という職を生業とするきっかけや、その苦労、今後の映画界に対する考えなど話題は多岐に及びましたが、お話の中心は奈良と映画との関係。
県外出身の自分にとって、奈良に住むまでのイメージは“大仏”“寺社”“鹿”に尽きるものでしたが、戸田さんはそういった当たり前の見方でない見方で奈良を撮ることにこそ、奈良独特の良さを伝えることができるとおっしゃていました。
例として出されたのは、平城宮跡。
確かに、世界遺産である平城宮跡に私鉄電車が横切っているなんて普通じゃ考えられませんし。
また、大袈裟な警備や案内板が見当たらない寺社に、何気なく歴史的価値のある文化財が置かれていたりしていることも、奈良の魅力であるとも。
整然とした観光地らしい場所は、同じくして都であった京都に比べると少ないかもしれませんが、逆に肩肘を張らなくて気軽に町歩きできる、良い意味での“ゆるさ”があることに惹かれているのかなぁと感じました。
戸田さんは、ご自身より若い世代が“遠いところへの想像力が強くなっている”とも一言。
裏返すと、身近な関係との繋がりが弱くなっているとの危惧なのでしょうか。
Webがコミュニケーションのツールとして大きな位置を占めるようになった昨今では中々に難しいことなのかもしれませんが、そんな時代であるからこそ、ご自身が映画の撮影を通じ、得た出会いや触れ合いを重視しているのと同様に、映画を観た人に伝わることを望んでおられるのではないのか、と勝手に解釈させてもらいました。
各々、参加者が座ったこたつごとで意見を交し合ったりしつつ、終始、和やかな雰囲気で授業は進行。
お店の黒猫ちゃんが「にゃー」と鳴いて、みんなが談笑するひとコマがあったり、ほっこりした気持ちになれたのは、部屋の暖かさだけではなかったように思えます。
貴重な学びの機会をありがとうございました。