詳細
●レポーター:奈良市在勤 こけし さん
「私が阿修羅を運んだ男です!~美術品輸送のエキスパートに迫る~」
このインパクトに、思わず申込してしまいました。
ずうっと気になっていたテーマではあったのです。気になりませんか、決して傷つけてはならない仏像をどうやって運ぶのか。
ご存知のとおり、仏様は多種多様な姿をされています。
材質も違います。木だったり、土だったり、金銅だったり・・・。
その一つひとつに向き合い、確実に目的地までお連れする「仏様の運び屋」の存在があるからこそ、博物館で私たちは感動を享受することができるのです。まさに彼らは縁の下の力持ち。
お話を聴いていて一番印象深かったは、「準備期間」が命であるということです。どう輸送するか、梱包はどのように行うか、シミュレーションを重ねに重ね、時には実際に走ったり作ったりする。経験と知識、技術とチームワークを、この期間に練り上げるのです。この徹底した準備期間があるからこそ、彼らは一番大事な時に慌てず落ち着いて作業ができるのでしょう。「このシミュレーションを実行に移して失敗したことは無い。」そうおっしゃった海老名さんの表情を忘れることはできません。
輸送と梱包の工夫ですべてを乗り越えるところに、彼らのプロフェッショナルがあります。道にせり出した木を伐採するのではなく避けるように梱包したり、道路の質の悪さによる文化財への負担を、道を変えるのではなく車体に工夫を施すことで乗り越える・・・この柔軟さや応用力が、仏様を安全に目的地までお連れするのに不可欠でもあるのです。流石です。
普段、舞台の裏側は決して見ることのないものです。ですが、そこに目を向けてみると、より舞台が魅力的に見える「何か」があるものです。今回は「仏様の運び屋」をとおして、文化財が無二の存在であること、そしてそれに関わる方々の苦労と情熱を感じ取れたような気がします。
最後に、お忙しいなか貴重なお話を聴かせてくださった海老名さんに感謝します。海老名さんは、終始にこやかに、おもしろおかしくお話をしてくださいました。私たちの質問にも丁寧に答えてくださり、講義の時間はあっという間に過ぎていきました。
本当にありがとうございました。