奈良ひとまち大学の授業「わたしが藍の色にこめる思い ~藍師、染師という仕事~」に参加させていただきました。
藍染は以前から何となく気になっていましたが、初めての体験で、授業が開催される北ノ庄も初めて行く場所で、楽しみ半分、不安と緊張半分の気持ちでうかがいました。
教室は周囲に畑があってのどかな場所にあり、教室に入ると染料のツーンとした独特のにおいがしました。
出迎えてくださった先生の手と腕が藍色に染まっていて職人さんの手だと思い、どんなお話が聞けるのか楽しみが増したところで授業がスタート。
前半は先生のお話をうかがいました。
藍染について、藍師・染師になったきっかけ、徳島での修業時代、今の仕事について等々。
先生は全国的には少ない藍の栽培と染料作りを行う藍師と染める作業を行う染師を両方やっておられるとのこと。
収穫された藍のブルーの葉や、染料の記録ノートも見せてもらいながらの話は、藍染がどのようにできるのか全く知らなかった私にはイチからとても分かりやすく興味深かったです。
何より印象的だったのは先生の藍染に対する情熱。
藍染に出会って、染めるだけでなく色にも責任を持ちたいと思って藍師と染師を目指した。
休みがほとんどないけれど藍染が好きだからあまり苦痛だと思わない。
こだわりは“いい色を作る”こと。
妥協せず自分が納得するまで作業を繰り返す。
お話を聞きながら私も何かひとつ情熱をもって取り組めるものがあるといいなと思いました。
その後、藍の栽培をしている畑を見せていただきました。
小さな苗への水やりは、乾いているものだけに水やりをするのでなかなか根気のいる作業のようです。
この地道な作業がよい藍色に繋がるとのこと。
後半はいよいよ藍染体験。
藍染というと濃い藍色をイメージしますが、薄い色・中間色・濃い色と大きく分けて3種類ありました。
先生から、そのまま液につける方法、手ぬぐいをくしゃくしゃ丸めて液につける方法、数か所輪ゴムで絞って液につける方法を教えていただき、それぞれ思い思いの方法で自分の好きな色の染料につけていきます。
私は中間色で手ぬぐいをくしゃくしゃ丸めて液につける方法を選択。
ゴム手袋をしながら液にドボンとつけると少しひんやりとした温度でした。
発酵させるため一定温度(21℃?)に保たれていて、この時期は少し冷たく、冬場は少し温かく感じるとのこと。
1分?つけて液からあげて絞ってという作業を2回から3回繰り返します。
アルカリ性の液からあげて空気にふれて酸化させることで藍色に染まるようです。
また、かたく絞るほどしっかりと染まるようです。
最後に水につけて洗い流します。
どんな作品になったのかどきどきしながら手ぬぐいを広げるとくしゃくしゃに丸めた部分がむら染めになっていて初体験にしては満足するものができました。
手ぬぐいを広げて乾燥させながら、参加者それぞれに違う作品ができて「素敵ですね」と声をかけ合いました。
最後に再び集まって先生の今後についてお話をうかがいました。
今後は藍染がどのようにできるのか作業の裏側が分かるような個展を開きたいとのこと。
「個展を開くということは先生は芸術家になるのですか?」という質問に、「僕は芸術家じゃありません」と。
あくまで藍色にこだわりを持って取り組まれており、今後もそのスタイルを貫き通そうとする姿に心を動かされました。
先生のお話に藍染体験と盛りだくさんで、とてもよい時間を過ごさせていただきました。
ありがとうございました。
授業当日は、前日より降っていた雨も午前中にはすっかり上がり、奈良市北之庄町にある工房へ電動ママチャリで行ってきました。
バス停「北の庄」から西に少し入った住宅地の路地を進み、真新しい工房に入ると、まず目に入ったのが真っ青な手に藍色の爪の笑顔の可愛い好青年。
そして初めての不思議な香り・・・わくわく感満載です。
今日の先生は「Indigo Classic」の小田大空さん。
大学では経済・経営学を学び、一般企業に就職後、20歳前後に出会っていた藍染工房を立ち上げるべく、徳島県の師匠の元で2年半みっちり修業をされてから、2022年春に地元のこの地で独立。
原料の蓼藍(たであい)の栽培から製品の製造まで取り組んでおられます。
工房は築60年の納屋を、できるところはセルフリフォームしたこだわりのお洒落な空間で、普段はお笑い芸人のラジオ番組を聞きながら、ひたすら作業に打ち込んでおられるそうです。
講義は参加者の自己紹介から始まり、アイスブレイク。
奈良市内からの他、他府県から、さらにはロンドンからの参加者もおられ、奈良で生まれる藍に引き寄せられた多彩な顔触れです。
アットホームな雰囲気の中、小田先生のプロフィールを導入に、藍染のお話を伺いました。
工房周辺の畑で収穫する蓼藍は1t必要で、茎と葉っぱを分けて乾燥して蒅(すくも)という染料にするところまでの「藍師」の領域、さらに藍染め液を調合して布や製品を染める「染師」の領域までを、全てお独りで完成度にこだわって制作されているとの事で、ものすごい仕事量と時間にビックリです。
辛いことはない・・・けど、今の時期は1時間半から2時間おきの苗の水やりがちょっと大変と、本当に楽しみながらお仕事されているようです。
近くにあるビニールハウスへ移動して、種から2cm程に育った蓼藍の小さな苗床を見学。
この水やりが重要で大変なのは一目瞭然です。
また、ハウス内ではウール生地やTシャツを染めた製品を等間隔に並べて乾かしていて、先生のきっちりした手仕事の一端を垣間見た気分でした。
ハウス周辺の広々としたきれいな畝の畑では、苗床から植え替えられたばかりであろう蓼藍が、前日の雨にも負けず気持ちよさげにひらひらと風に吹かれています。
この小さな苗から沢山の葉っぱを収穫して藍色に染める事を江戸時代から受け継いでいる。
SDGsというか、原点回帰というか、インディゴブルーの魅力を実感しました。
6月には1度目の収穫ができるそうなので、青々と育った畑の葉っぱを見に来ようと思います。
工房に戻り、いよいよ体験タイム。
足元の液の容器は6か所で水深は110㎝と80㎝と聞いて、落ちたらやばいな!!と、ちょっと緊張のスタートです。
真っ白なIndigo Classicのロゴ入り手ぬぐいを30秒液に浸けて、30秒広げて、を3回繰り返したら、酸化反応であっという間にインディゴブルーになります。
水洗いするとさらに発色し、色が全員それぞれに違っていて、きれ~~い!おもしろ~~い!!たのし~~い!!!
想像以上で大感激でした。
先生は近々個展を企画しておられ、作家としての作品展示というよりも、藍染の作業工程や道具を紹介して、もっと多くの人々に藍染を知ってもらいたいとおっしゃっていました。
いつになるか、ホームページでチェックしておきます。
最後に全員で記念撮影をして解散となりました。
あらゆる繊細なタッチまで感じるために素手で作業している青い手と藍色の爪を持つ小田大空さん。
稀有な存在で、街中で二度見やガン見に晒されるのは常のようですが、今日参加した弟子の私たちは、師匠のトレードマークの青い手と藍色の爪を見かけたら、声を掛けてエールを送ること間違いなしですわ。