今回初めて、奈良ひとまち大学の授業を受けさせていただいたのですが、参加しようと思ったきっかけは、今は亡き祖父が昔、筆づくりをしていたからでした。
この日は夏かと思うぐらい暑くて、とても良いお天気でした。

早目に着いた私は、その場におられた伝統工芸士の松谷さんとお話をしていました。
なんとその方は、祖父と一緒に仕事をしておられた方だと判明。本当に驚きました。

授業が始まり、
筆の歴史や使用されている毛の種類、一人ひとりの書き手に合わせて作っていったから、今こんなにも種類があることなどを教えていただき、奈良筆を触らせてもらったり、筆作りを実際に真近で見せていただきました。
手際よく作業されていて、とても感心しました。

その後の自由体験の時間に、筆を固めるために糊をつけ、余分についたものを糸で絞る、という作業をさせてもらったのですが、全然上手くできませんでした。
やっぱり職人技だなと、改めて感心。祖父は凄いことをしていたようです。
他にも、水彩画を描いたり、化粧筆の体験をしたり、様々な体験をされていました。

今回、このような貴重な体験ができて、本当によかったと思いました。

またぜひ、他の授業にも参加させていただきたいと思います。興味深い授業がたくさんあって、迷いますね。
この度は本当にありがとうございました!

大人になってから奈良に暮らし始めた私。
以前からなんとなくお寺や仏像に興味を持っていたものの、何から手を付けたらよいのかわからないまま、漫然とお寺や美術館・博物館を眺めるだけ。
神社仏閣がとても身近にあるこの街の魅力をもっと知りたいと思い、初めて授業に参加させていただきました。
吉水快聞先生のプロフィールを拝見した時に、期待が膨らみました。
奈良に生まれ育ち、僧侶の資格を持ち、東京芸大で文化財の保護修復彫刻を学び、温故知新を宗とする新進気鋭の彫刻家さん。
今回の授業は、興福寺の子院であった「旧世尊院」の敷地にある国際奈良学セミナーハウスで行われる座学ということでしたので、静かで少し敷居の高い感じの講座なのでは・・・と、緊張気味に教室へ。
良い意味で裏切られました。

趣のある門をくぐると、満開の藤の花を眺めながら、講義のお部屋へ。
先生との距離が近く感じられる、こぢんまりとした部屋。
前方の机にさらりと並べられた、鑿(のみ)や木材、そして作品たち。
びっしりと文字が並んだ小難しい資料ではなく、興味を持ちやすそうなものたちがまず目に入ったことで、気楽な気持ちで参加してもよさそうだと安心できました。

教室から感じた第一印象のとおり、吉水先生はとてもよく通る力強い声で快活にお話しされ、初心者の私にも親しみやすく聴きやすいものでした。
まずは、仏教・仏像の起源、仏像の素材・技法、日本の仏像に用いられた主な樹種、仏像の制作過程・仕上げ方法といった流れで、仏像の概略が説明されました。

このなかで、良質な木材の調達が非常に困難であり、大きな仏像を作れる木材は世界にももうほとんどないということに驚かされました。
東大寺を最初に作った天平時代には近畿周辺で木材を入手できたものの、鎌倉時代の再建時には山口県あたりから運搬。江戸時代には調達が不可能となっていたために、寄木金輪締めという方法で太い柱を作っていたとのこと。
少なくとも樹齢300年以上を経た木でないと、木材として不十分だそうです。
木を素材に彫刻をしている人として吉水先生は植林活動もなさっている、というお話が印象的でした。
こうした仏像にまつわる大まかな知識を頭にいれたところで、ついに本題。作り手目線からの仏像解説。
奈良市周辺にある数々の仏像が、次から次へと登場。
運慶・快慶にまつわるくだりは、快慶びいきだとおっしゃる吉水先生の一層熱を帯びた語り口調に、こちらも引き込まれました。

時間が押してしまっており、ハイペースでお話が進んでいってしまうのが少し残念でしたが、その分、本物をゆっくり見に行ってみたいとも思わされました。
そのため、授業終了後、とりあえず奈良国立博物館に向かいました。
そこで展示されていた快慶作・東大寺蔵・阿弥陀如来立像。
吉水先生が模刻されたということで、授業のなかでも映像も豊富に詳細な解説を伺っていたため、これまでにないくらいじっくり堪能。
美しく残っている截金(きりかね)による繊細な文様に、息をのみました。
今後も少しずつ仏像を眺める楽しみを増やしていければいいな、と思いました。
ありがとうございました!
先生である吉水快聞さんは奈良県内のお寺でお生まれになって、副住職としての顔をお持ちになる一方、彫刻家という一見相容れない職業をかけもちされている方でした。

授業が進むにつれて、自身の作品である「東大寺俊乗堂快慶作阿弥陀如来立像想定復元模刻」の制作を通して、わが国の彫刻の歴史は仏像制作に求めることができるということ、その細かさは驚きの技術であることなど、先人の匠の技術をわかりやすく解説していただきました。
仏像づくりはまず、その制作に適した樹を探すことから始まります。
本来は白檀(ビャクダン)という木で作ることが望ましいと経典には書かれているようですが、日本では手に入らないため、クスノキ・カツラ・ケヤキ・カヤ・ヒノキなどが代用されました。
その樹も、実際に制作しようとすると、外側の部分は使用できないため、伝統の一木造を作るためには樹齢何百年といった相当大きな樹木を要します。
当然そのような木を確保することは非常に難しく、価格も高額になるそうです。
授業のなかで特に、法隆寺の国宝救世観音立像から辿る、日本の仏像のダイジェストはわかりやすく見ごたえがありました。

そのなかでも、「土壁の砂像である東大寺戒壇院の四天王立像、いまその姿を目にすることができるのは、その時々のこの仏像に関わられた人々が大切にそして懸命に守られたからだ」とお話されたことが、とても印象深く残っています。
我々が次代のためにこの唯一無二の宝物を伝えるためにしなければならないこと、それを考えさせられました。

とても繊細で、多くの人が長い時間をかけて制作した仏像。
それは宗教という枠組みを超えて、現代人にその迫力を伝えます。
古代から預かったこの宝物を次代に繋げるとともに、時代に沿った要素を加味したモノづくり、まさに温故知新の心で「生きた作品」づくりに取り組まれている吉水先生の、モノづくりへの心意気を学んだ授業となりました。
