奈良の老舗建設企業、尾田組の尾田安信代表取締役のお話を伺いました。
教室は吉城園のお茶室で、こちらも尾田組が耐震工事を手掛けられた建物です。

尾田組は、江戸時代に宮大工としてスタートされ、東大寺・春日大社・興福寺などの寺社修理、奈良国立博物館・菊水楼・奈良女子大学講堂(現在の記念館)の建設などなど、近鉄奈良駅界隈では欠かせない建物に深く関わっています。
最近では、興福寺の五重塔修復工事や、東大寺の護岸工事など、奈良の歴史を未来に残すお仕事を手掛けられています!

特に印象に残ったのが、木材という構造体の強さについて。
世界最古の現存する木の椅子は、なんとエジプトで4600年も前に作られたもの。
世界最古の木造建築と言われている奈良の法隆寺の木材は、今伐採した木材と同じ強度なのだとか。
これには木材の「含水率」が関係していて、木材に含まれる水分が乾燥するにつれ強度がUPし、ヒノキの場合には伐採から200年後が強度MAX、その後1000年ほどかけて強度が低減していくそうです。
奈良のお寺や神社が、なぜこんなにも長い間美しさを保っていられるのか、その理由が分かった気がします。

尾田組の今後についても語られ、「これまでは壊れたものの修理・修復が中心だったが、これからは点検や予防にも力を入れていきたい」とのことでした。
人の手が入っていない春日山原始林や、野生の鹿が生息するなど日本全国でも特殊な環境の奈良。
今もこの環境が守られているのは、「過去の人々が建物や景観を守ってきた歴史があるからこそ」とおっしゃっていました。

近鉄奈良駅界隈を歩いて、ただ美しいとか素敵だなと思って眺めていた景色が、どのような想いで守られているのか、今回の授業で知ることができました。
美しい奈良を守ってくれるお仕事に感謝するとともに、市民としても何かできることがないか考えていきたいと思いました。
奈良公園近郊の吉城園の茶室で、吉城園の耐震改修工事を手掛けられた尾田組9代目代表取締役の尾田安信さんと、同社の主任さんの授業を受けました。
茶道の経験者や伝統建築に関心が高い方が参加されていました。

前半は映像を交えて、1830年頃の創業以来、同社が手掛けられた数々の事例と奈良県の寺社建築の歴史等をお聴きしました。
宮大工の仕事のひとつとして接ぎ木の見本を紹介いただき、現物を触らせてもらい、その仕組みが理解できました。

その後、会場である茶室の耐震改修工事を手掛けられた主任さんから当時のことを解説いただきました。
木の腐食への対応、本来の建物の内装を考慮した補強等、難しい仕事に丁寧に対応されており、いたく感心しました。
壁の塗装では以前と同じように錆びを混ぜて花のように見せるため、繰り返し試行されたそうです。

後半は最近のSDGsを交えて、木造建築の特徴や木材を扱うための正しい知識について学びました。
尾田社長がおっしゃった、「奈良は長い歴史を示す伝統建築が多い場所である。そしてそれらと景観を守る人がいるという」という言葉に、宮大工集団を率いる矜持と我々もその一員でありたいという共感を覚えました。
今後、奈良の寺社仏閣等を訪れる際は、建物の歴史とそれ守る人々に思いをはせたいです。

日本庭園があることは知っていましたが、名前からして敷居が高いのでは?と感じていた「旧大乗院庭園」。
このたび奈良ひとまち大学のご縁があり初めて訪れることができました。

まずは名勝大乗院庭園文化館 館長・辻さんのお話。
こちらにはもともとは元興寺の宿坊があり、南都焼き討ちにより、今の県庁あたりにあった興福寺・大乗院が移転してきたこと。
隣接する奈良ホテルの庭園と思われがちだが、大乗院の一角に奈良ホテルが建てられたこと。
他にも東大寺二月堂の裏話など、奈良の歴史にちなんだ学びあり笑いありの第一部でした。

続いて、御年80歳とは思えないシャキッとした佇まいで、まだまだ現場に立ち続けたいと語る庭師・牧岡さんのお話。
日本庭園には4つの様式があり、大乗院庭園は寝殿造様式。
今はなき大乗院御所の前には広場があり、公家が蹴鞠や相撲を鑑賞したとのこと。
善阿弥が手がけた壮大な庭園、そして高円山を借景にした贅沢なひとときを想像できます。

また池の水は、濁りを防ぐために青龍から白虎の方角へ流すそうですが、自然の水(山からの水)だけで賄うのは難しいとのこと。
池に点在する島々は、風によって波打つ水の力を分散する役割があり、丸石と竹で縁取られた池淵の浸食を防いでいるようです。
島に植えられた松の根っこは強度に一役買っていること。
一見、自然豊かな日本庭園ですが、緻密な計算によって維持・管理されているのですね。

生まれも育ちも奈良の私は、水の無駄遣いに厳しかった祖母を思い出しました。
平城京の時代から現代に至るまで、奈良では水源の確保に苦労した歴史があります。
先人たちの工夫と努力により、安定した暮らしが維持できている現在だから。
大乗院庭園も豊かな水を蓄えて、現代に蘇ることができたのかもしれません。