「ヒトはシカの天敵、それとも親友!?」の授業を終えて
2011.01.23 | 授業 | by Staff
「奈良の鹿」は、1957年9月18日に「天然記念物」として「地域を定めず指定」されたもので、概ね奈良公園一円の鹿のことです。文化財保護法により、故意に殺傷すれば5年以下の懲役・30万円以下の罰金が科せられます。
街なかで「天然記念物」が闊歩しているというのは、なかなか爽快ですね。
現在の鹿の数は1,096頭。
雄197頭・雌713頭・子鹿186頭(2010年7月15日・16日の頭数調査)で、圧倒的に雌が多いようです。
鹿の死亡要因は、「疾病→交通事故→その他」の順で、鹿の交通事故は、秋から冬に掛けての発情期、雄鹿から逃れた雌鹿が道路に飛び出し車に轢かれることが最も多く、次に、雌鹿の後で飛び出した子鹿が轢かれる場合が多いようです。その他では、消化できないビニールなどを食べて死亡する鹿もいます。
この事実を見ると、人間は十分に鹿の天敵だと思えます。
「鹿と人間の共生」を考えると、「鹿の角切り」がやはり必要かと思います。
鹿の角切りは、寛文12年に奈良奉行所となった溝口信勝によって始められています。
奈良が都市として発展し、鹿に突かれて傷を受ける町人が多くなることで、鹿の角切りが主張されます。
興福寺は当初、鹿を捉え角が落ちるまで囲うことを主張し実践したところ、囲われた鹿の死傷事故が多く、やむを得ず「角切り」に同意しています。
現在、鹿の角切りは鹿苑での年中行事として行われ、奈良の鹿愛護会の収入源の一つとなっています。
奈良の鹿愛護会 職員の職務内容を伺うと、なかなか大変なもので、傷ついた鹿の保護・死亡した鹿の処分など、重労働です。かなり根性を入れないと、好きだけでできる仕事ではありません。
奈良人にとって「普通」に感じている奈良公園ですが、実は「鹿・芝・糞虫・人」の共生空間です。
鹿が日本芝などの植物を食べることで景観が保持され、鹿の糞がルリセンチコガネなどの糞虫により分解され日本芝の養分となるという生態系が、奈良公園では成立しています。
こうした奈良公園に観光客が来て、世界でも珍しい野生動物と人間との交流が生まれています。
鹿たちは、「鹿せんべい」をおやつとして観光客から貰い、観光客は鹿との素敵な付き合いを楽しんでいます。
この関係性は、今後も守り続けたい奈良の宝ですね。
キーストーンは言わずもがな「鹿」です。従って、鹿を守り続ける奈良の鹿愛護会の役割は非常に重要なものがあると、今回の授業を通じて強くそう思いました。
(浪鹿)