ここは夏の田原。標高400m。
標高が100m上がると気温が1℃下がると言いますが、市街地より3℃程度涼しいはずの田原でもジリジリと照りつける太陽には勝てません。
暑い1日の始まりです。
8月19日(土)の授業「やま里がまるごと博物館! ~田原地区の魅力、お届けします~」のスタッフは、甘えん坊で恥ずかしがり屋の“どすこい”を筆頭に、歴女でエヴァとゴジラを愛する“せとやん”、田原勤め4年目でミョウガと細い道が大好きな“よったか”の3人です。
髪型を夏仕様にカットした“どすこい”は、大の写真嫌い。
「僕は写真には写りませんから」とか恐いことを口走る彼を盗撮するように受付風景を記録します。
天気は前日朝の豪雨が嘘のように快晴そのもの。
今回の授業は、田原やま里博物館と奈良市観光振興課、そして田原公民館とのコラボ企画「田原やま里博物館☆夏休み体験フェスタ」とのタイアップです。
田原やま里博物館とは、奈良市が「まちかど博物館」として奈良きたまちを指定したのに続き、この田原でも工房や農園などの仕事場を博物館と見立てて公開しているものです。
田原公民館で「レジェンド」と呼んでいる各博物館の館長さんが既に前日からイベントを開催し、大盛況のうちに2日目を迎えたところです。
メイン会場の「田原ふる里ほっとステーション」と掛け持ち従事をしている私“よったか”は、会場で朝礼を終えた後、授業を行う田原公民館へ戻ります。
数少ないバスの時間に合わせて受付を終える3人。
いよいよ本日の先生、窪田りんご園の窪田弘子さんをお迎えします。
“どすこい”の開講の言葉。
挨拶嫌いの彼は表情を固めてまっすぐ1点を見つめてしゃべります。
カメラを向けるなと言われても、そうはいきません。
窪田先生は、地区外からお嫁入りして田原にやってきたといいます。
当初は田原が嫌いで、ご近所ともできるだけ接触を避けてきた先生。
どうしてりんご園をすることになったのか。
どうして田原の魅力をこの場で語ることになったのか。
自分の言葉で語っていく先生の話に引き込まれていきます。
前日はNHK奈良放送の「ならナビ」にライブで出演をしたところ。
本日のイベント会場の様子も気にしながら、各博物館の紹介へ話を進めていきます。
授業の詳しい様子や内容は「ひとまちレポート」をご覧ください。
「気軽に!週末プチ茶畑旅行」
http://nhmu.jp/report/29101
配付された地図とにらめっこしながら話を聴く学生たち。
初めて田原を訪れた人は?という問いかけには半分くらいの手が挙がりました。
さあ、田原公民館での座学はここまで。
本日の目的地はあと3ヶ所。
「2時間目」は奈良市指定文化財の松本邸に向かいます。
田原に来たことがあるという方でも、ほとんどが県道を走り抜けて東西を移動するだけということも。
田原の魅力の神髄は細い道です。
3度の飯より細い路地が好きな私が案内します。
実りの田を越え、猪の檻を横目に茶畑を過ぎた角に、松本邸が聳えます。
先生は、ご当主・松本陽一館長。
松本先生は田原地区自治連合会長や茗荷郵便局長を兼任される、地元ではとっても有名な名士さん。
前島密の逓信省の時代に郵便事業を始めた松本家。
江戸時代からそこにある荘厳なたたずまいの中に、小さな郵便の窓口を設けたとの話。
三間くだりの座敷に上がった学生たちは、時代を語る調度品の数々に心を奪われます。
松本家を後にした学生一行は、「3時間目」の目的地・田原ブルーベリー園に向かいます。
“どすこい”は既に電源がOFFのよう。
学生たちに混じって付いて来ます。
ブルーベリー園でお迎えしてくれたのは中尾さんです。
お昼までの間、渡された袋に摘み取っては詰めていきます。
美味しい実は大きくて黒く、おへそがくっきりと浮き出ているものです。
酸っぱいもの、甘いもの、固いもの、熟したもの。
選別しているうちに終了の時間です。
チャイムの代わりに“どすこい”が「ひ、ひとま・・・」と焦っていたら、“せとやん”が滑舌良く「ひとまち大学のみなさん、お時間5分前です!お急ぎください」との呼びかけ。
今度は、マナーモードに切り替わる“どすこい”・・・。
摘み取りを終えた一行は「夏休み体験フェスタ」の会場である田原ふる里ほっとステーションへ。
お腹を空かせた学生たちを迎えたのは、なんと!仲川学長!!
(驚きのあまり写真はございません・・・ここは宣材写真でご了承ください。)
賑わっている会場と奈良ひとまち大学の授業の様子をご覧になって、にこやかなご様子。
「市内から田原へ来られる方をもっと増やすため、姉妹地域という考え方もありますね」とご挨拶。
直後には、しかまろくんも応援に駆けつけてくれました。
本日の給食(昼食)は、地元・田原産の食材をふんだんに使った「田原やま里弁当」です。
田原のお茶で喉を潤しながら、外のテラスでいただきます。
太陽が真上に来た頃ですが、各体験のブースは大人気。
行列ができているところもあります。
食事を終えたみなさんは、各ブースの見学へ。
職人たちが生み出す数々の技に魅了されていました。
さあ、午後からの「4時間目」は、田原ほっとステーションの2階へ移動。
岡井麻布商店の岡井孝憲館長の登場です。
岡井先生は、江戸時代に創業した老舗麻工房の店主。
手織りで織り上げる「奈良晒」は、その風合いと涼やかな手触りが人気の伝統産業です。
今回は明治時代から伝わる8畳サイズの蚊帳の中に入っての授業です。
吹き抜ける風に揺れる蚊帳のにおい。
岡井先生は、昔から伝わる手紡ぎの糸を使った麻布の魅力を力強く語ってくださいました。
奈良ひとまち大学をきっかけに田原地区に初めて足を運んだという半数の学生たち。
そして、何度も来ていますという方にも新たな発見を提供する。
今回の授業はそんな機会になったはずです。
田原の魅力はお茶、米、自然。
一見するとそうですが、やはり人です。
みなさんをおもてなしし、田原を楽しんでもらう、田原を好きになってもらうことが、田原の方たちの何よりの喜びです。
そんな思いがあるから、何度も足を運びたくなるんでしょう。
1日どっぷりと肩まで田原につかった学生たち。
心が渇いたらきっとまたこの地に帰って来てほしいと思います。
オマケ:
授業終了後、蚊帳の中でゆっくりくつろぐスタッフと先生の図です。
(よったか)