授業サポートスタッフの“よったか”です。
台風12号が近づいていたので、1週間ずっと天気予報とにらめっこでしたが、心配もなんのその。
雲ひとつない快晴となりました。
7月26日。本日の授業は「夏恒例、日本最大級!の大文字 ~奈良大文字送り火の楽しみ方~」です。
奈良ひとまち大学事務局に集合したスタッフは、“かっぱ”“もじゅ”“さとちん”“よったか”の4人。
事前に暑さ対策とヒル対策をしっかりと命ぜられ、4人は肌の露出の全くない完全防備の怪しさです。
荷物を積んで、いざ出発。
窓越しに差す日差しは、8時台だというのに既にギラギラ感満点です。
集合場所は、「破石町」バス停。
奈良の難読地名のひとつ「破石(わりいし)」。
バス停そばには、既に先生がお待ちでした。
本日の先生は、奈良大文字保存会の田中さん。
そして、奈良市観光協会からサポートの方が来てくださいました。
すぐそばの奈良公園の杜から聞こえるセミの鳴き声が耳を劈きます。
先生にご挨拶をして、車で送ってもらう人、市内循環バスで来る人、そしてなんと自転車で来るツワモノさんを、交差点付近にのぼり旗を立てて迎えます。
9時15分の受付開始前に、既に10人ほどが集合してくださいました。
軽ハイキングのような装いの方、しっかり山装備の方、それぞれバラエティに富んでいて、おもしろいです。
そして、受付終了の1分前にハプニングが!
のぼり旗を立てていた電柱の上にいたムクドリから、突然のフンのプレゼント。
それが、受付中の学生さんのジャケットに!
一瞬何が起こったのかわからなかったほどのスピードで直撃したモノは、私のリュックにも証拠を残していました・・・。
さて、気を取り直して、開講の挨拶をする場所へ移動します。
詳しい場所は「飛鳥中学前で」ってことで、アスファルトの道ですが、それなりの勾配を上っていきます。
私は、のぼり旗を持ったまま桃太郎します。
すかさず、オレンジのTシャツの上に半被を着込む先生。
すると早速、先生の周りには人だかりが。
質問攻めに遭います。
ちゃんと紹介していなかったので、みなさん、どの方が先生かわからなかったんですね。
既にすっかり汗だくになったスタッフと学生のみなさんは、トイレ休憩を済ませて、中学を越えた道の一角で改めてご挨拶。
持参されたマイクを使って話される田中先生は、旅行のガイドさんのようです。
柔らかく優しい声に吸い込まれたみなさんは、その後のヒルの話でかなりビビらされます。
知らないうちに血だらけになったスタッフの話。
黒く細い姿が血を吸って丸くなる話。
登山道の坂道の大変さより、ヒルの恐ろしさに意識を奪われます。
しばらく歩き、山の入り口まで来ました。
登山用の山として公式に紹介している訳ではないのですが、私設の看板がいくつか残されています。
虫除けスプレーをしっかりと足下にふったみなさんは、先生を先頭にスタスタと歩き出します。
多少息を切らしながらも、後ろ向きのマイクで説明する先生。
高円山の説明が入ります。
民有地だった山を5年ほど前にほとんど奈良県が買い取りを終え、県有地としたとのこと。
すなわちこの登山道も県道だと。
確かに奈良県と書かれた石の標識をいくつも見かけます。
橋のない小川を横切り歩いて行くと、後ろから鹿寄せのホラ貝をふく音が。
なぜか少し下手に聞こえるその音が少しずつ離れていきます。
途中、青空を反射する神秘的な池。
甘い樹液のにおいを漂わすクヌギ。
台風が倒したであろう倒木をくぐり抜けて進みます。
先生によると、この山は飛び地が多いと言います。
高円山が位置するのは奈良市白毫寺町ですが、東九条町や鹿野園町もあると。
なぜなら、昔は薪を集めるための場所だったからとか。
勉強になりますね。
そしてほぼノンストップで抜けきって、火床のある芝生の広いところへ出ました。
真上に上がろうとする太陽から一気に熱を感じます。
坂道に並んだ火床は、コンクリートブロックで囲われています。
思わず腰を下ろしてしまいそうになるみなさん。
でも、先生は言います。
「決して座らないでください。
ここは神聖な場所。
ブロックに腰掛けるということは、お墓に座るのと同じことですから」と。
さて、隣の若草山よりも大パノラマの風景を楽しめる、この場所。
特に今日は空気が澄み切っていて、北は京都方面、南は大和三山橿原方面、西は金剛、葛城山を越えて海まで見えそうです。
この火床から見る景色が開けているということは、逆にどこからでもこの大文字が望めるということ。
奈良の大文字をこの場所に決めた英断がうかがえます。
さあ、少し汗が引いてきたところで、先生の話が始まります。
ここからの詳しい授業の様子は、
「ひとまちレポート」をご覧ください★
「ヒルとの格闘! ~奈良の大文字~」
http://nhmu.jp/report/23021
先生が話し終わる時間、少しザワつき始めた学生たち。
気づくと男性の足から血が。
やはり気づかないうちに足下にヒルがついていたようです。
ヒルを初めて見るみなさんは興味津々。
丸くなった姿を写真におさめる人、傷口をよく見る人。
ヒルは先頭者より、3番目くらいが狙われるとの話。
その方も確かに3番目でしたね。
さて、送り火の話はまとめに入ります。
先生は言います。
「大文字焼きとは言わないでほしい。
私たち保存会が残していきたいのは、キレイな炎の行事ではなく、関わる人から人へのつながりと、たくさんの犠牲の下に今があるということ。
お祭りやイベントじゃないんです。
火床を壊したり、マウンテンバイクで走ったり、パラグライダーを飛ばそうなんて、考えられません。
ここから送られる英霊たちに思いをむけてほしい。」
終戦の日8月15日に行われる、奈良大文字送り火。
今年は終戦70年の節目の年です。
発足当時の保存会会員はもう数少ない今。
この送り火の意味と、人が人へつないでいく命の営みを絶やしていけないと強く思いました。
最後に学生さんが、改めてこの景色を見て、ため息混じりに言います。
「奈良に生まれて仕事をしてきました。
県外の観光地は行き尽くしましたが、奈良を、生まれたこの地のことを、一番知らない自分がいます。
今臨むこの景色は阿蘇のカルデラよりも雄大だと思います」と。
下山は、駆け下りるようにあっという間でした。
暑さで流れる汗は止まりませんが、学生さんたちは送り火のもつ大きな思いをしっかりと持って帰ってくれたと思います。
今年はぜひ、ご家族や大切な人と大文字を見上げ、手を合わせてほしいですね。
終始気さくに話してくださった田中先生。
笑顔が似合う人なつっこい性格と、芯の通った強い一面を見ることができた気がします。
ありがとうございました!
(スタッフが1人、遭難騒動に巻き込まれた話はまたの機会にします・・・。)
(よったか)